なんでもない一日を、大切にしようという思いが新たにされるような3月です。 建物から無駄に流れでているエネルギーを出来るだけ少なくして 太陽のエネルギーを享受する。 寒さに耐えることに費やされている人間のエネルギーを 良い方向に使えるよう、住まいを整える。 一人一人が幸福と感じる時間を増やす。 それは繋がっていることだろうと思っています。 間違いに気づいたら、変われば良いし 表面的に見えているコストを下げることを引き換えにした 冬寒く夏熱い家をこれからは選択しない。 長期的なエネルギーのランニングコストを含めて冷静に判断すれば 温熱性能に投資をするという選択が 住まいを持とうという人達にとって普通のことになる日は近い(はず)。 将来リフォームすることを考えても、 壁を剥がして断熱材を入れたり、サッシを付け替えるのはどうしてもハードルが高い。 優先順位を考えて、お施主さまに提案することや、住に関わる「仲間」にも認識を拡げることは私たちの仕事だなあと感じるところです。 エネルギーコストが上昇することはほぼ確実で 進む方向ははっきりしているので あとはやるだけ、変わるまで続けるだけなのですよね。 * * * 床の話を書こうと思っていたのですが、、 前置きを書いているうち、そんなながれになったので 今回は寄り道してエネルギーの話を書きます。 ますますややこしくなってしまいますが、どうかご容赦を。。 住宅で使うエネルギー 換気 照明 冷房 暖房 家電など、その他のエネルギー のうち、 「暖房エネルギー」の占める割合は大きく 建物の性能を上げたり、熱源機の種類を変えることで 減らしやすい部分といえます。 右上のグラフの部分を拡大。 水色 「冷房」 青 「換気」 黄緑 「給湯」 オレンジ「照明」 グレー 「その他のエネルギー」 関東の住宅で 主な開口部にはlow-Eペアガラスを入れ、庇のある設計ですが、実は飛び抜けて開口部の性能が良い訳ではないですし、もっと 高い数値を求めることもできたでしょうね…。ここでは太陽電池を乗せて消費エネルギー量を相殺することもしていません。 (ここでは、フラット35Sの省エネ等級5をクリアすることを目標にしました。) 平屋部分が多いので、開口部率が低く抑えられ、このプログラム上、良い数値になりました。 これは計算値で、実際に冷房に使うエネルギーの割合はもう少し増えるのではないかと思ってますし、 体感性能を上げる観点で、このプログラム上の数値とは別の検討が必要と私は思ってマス。 反省はさておき、、 それにしても、暖房エネルギーの割合とくらべると冷房はそれほどでもないんですよね。 基準値からして、この差はなんだろう、と。 熱源機の選択によって、大きく消費エネルギー量が変わるのですね。 たとえば、この家は、ヒートポンプ熱源の冷温水器を置いて、 冷温水を放熱器に循環させる方式の冷暖房を採用しているのですが 試しに、電気ヒーターを熱源に設定して計算すると、 がーんと数値がアップしてしまいます。 (暖房用熱源としては、電気ヒーターが最も消費エネルギーが多い。) 少々ややこしいですが、上の表について簡単に説明をしておきますと 住宅で使う電気、灯油、都市ガスなどのエネルギーを「二次エネルギー」と言って、このままだとkwとかリットルとか、MJとか単位がバラバラなので 化石燃料や、水力、太陽光、原子力、などの自然から得られるとする「一次エネルギー」に換算することで、単位を揃えて扱う判定プログラムです。 「建っている地域」「規模」「建物の性能」※や「使用する設備の概要」を入力すると消費エネルギー量を計算してくれます。 次にいきましょう…! また、「建物の性能」と一口に表現していますが、 ・外皮(屋根・壁・床)の面積と各部の仕上げ材を含んだ断熱性能。 ・窓の向き、庇の出具合、夏と冬で日射をどのくらい受容・遮熱するか。 などを、細かく数字を入れ算出します…。ちなみに、2020年には住宅にもこの計算が義務付される見込みです。(国のロードマップによれば…) ええと、グラフに戻ると 下の二つは、それぞれ「省エネ」「低炭素住宅」の基準値を示すので この家の一次消費エネルギー量は、トータルでそれぞれの基準値をクリアしていますよ。ということが判ります。 それぞれの基準値について説明すると長くなるので割愛、ごめんなさい。(どちらも日本国内のこれまでの基準よりは高い。) 冬について言えば、 「エネルギー効率の良い熱源機を使えば」一次消費エネルギー量が下がる。 「外皮(屋根・壁・床・窓)から逃げる熱の量を減らせば」一次消費エネルギー量は下がる。 「窓から入ってくる太陽のエネルギーが増えれば」一次消費エネルギー量は下がる。 となります。 設備と、外皮の性能をセットで評価できる点が 優れた評価プログラムだと思います。 日本は、太陽のエネルギーに恵まれている地域で、北緯でいえば 東京はアルジェリアと同じくらい。 北海道でもイタリアのローマくらい。 透明なガラスが美しいモダニズム建築はフランスやドイツの辺りが発祥で 同じ北緯で東に辿って行くと、その先は樺太だったりするんですよね・・という訳で、安易にマネするのは危ない。 扱い方によっては危険なパワーを秘めている太陽のエネルギー。 夏もあることですので、庇を使い 季節によってコントロールしながら、冬の日射を上手く取り込みたいと考えています。 …つづく! #
by o-oik
| 2017-03-13 13:56
| 住まいにまつわる私の考え
今日から3月弥生。 着実に春に向かう毎日、だんだん日も長くなって来ましたね! 頂き物のふきのとうをどうやって食べようか、楽しみなこの季節。 (ふき味噌、辰巳芳子さんのレシピで作ろうかな。) 季節の変化もなんのその、今日も冬暖かい住まいについて続きです。(笑) * * * 前回の記事では、 室温は体感温度と異なること。 体感温度を上げるには、特に温度の下がる窓ガラスなど、開口部に対策を施すことが大切、というお話をしました。 リフォームの事例を例にとって、お話します。 断熱、耐震改修を行った カラマツ書庫の家。 こちらは、当時 収納しきれない本を納める本棚が欲しい、というご要望から始まった計画ですが 冬の寒さをどうにかしたい 地震が不安、などなど他にもご要望がありました。 モンダイの開口部ですが、もともと入っていた古いアルミサッシは シングルガラス(!)でした。 寒冷地なので、内側に木製のガラス引き戸が入っていましたが 隙間から冷気がビュービュー入ってくる。 今から40年ほど昔の建売住宅、当時の設計ではよくあることとして 開口部が大きすぎ、地震に耐える壁が不足していました。 また、人目に付きにくい裏側にある掃きだし窓は、温熱環境上のみならず、 防犯上もマイナスでお困りでした。 ![]() ![]() ![]() 出窓があると、限られた面積でもより広く感じますよね。 こちらは、さきほどとは反対側から見た改修前の写真です。 ![]() 奥の部屋は、もともと和室だったところを書斎に改装してありました。 左側に見えているガラス引き戸は、造りつけの本棚です。 が、 年月を経て、そこに納まりきらない本が入ったダンボールが部屋中に積まれ、足の踏み場のない状態でした…。 壁が迫った隣地境界に面する窓は「要りません!」とのことだったので 思い切ってふさいで壁をつくり、落ち着きのあるスペースにしました。 2階からの光で、蛍光灯が無くても明るいリビング兼書斎になりました。 床の段差も解消した、フラットな床のワンルームです。 ちなみに、窓下にある板状の細長いものは、暖房用の温水パネルです。 このように、冷気の侵入口になる窓下に熱源をもってくる、というのは 温水パネルを配置するときのセオリーのようなものですが、 こうやって寒さを取り除くことで、同じ室温でも暖かく感じる工夫をしています。 外からみると、これが こうなりました。 ![]() 外壁の間口いっぱいのアルミサッシの幅を詰め出窓とし Low-Eガラスの入った樹脂サッシに入れ替え。 外観のポイントにもなったのではないかと思います。 #
by o-oik
| 2017-03-01 13:12
| 住まいにまつわる私の考え
こんにちは。
東京では梅の花が香り、ふきのとうが芽を出し、鳥のさえずりにも春を迎えるヨロコビが感じ取れるような(気がする)この頃。 季節に逆行するようですが、今日も、冬暖かい住まいについて、書いてみたいと思います。 「冷え取り」「温活」特集など本屋で見かけると、ついつい読んでしまうのですが、今シーズン新しく知った「背中の肩甲骨の間にカイロを貼る」という方法は強制的ながら効果がありました。外仕事のあるときには今後取り入れて行こうと思います・・・! * * * さて、本題に入ります。 はじめに、ひとつ質問を。 暖房を22℃に設定したときに、「体感温度」も同じく22℃でしょうか? 昼間陽があたって温まっているタイル床と、 しばらく留守にしていて冷え切っているタイル床。 それぞれの場面で、同じ暖かさに空気を暖めても 片方では「暖かい」と感じ、もう一方では「寒い」と感じることは想像できると思います。 暖房器具にもよりますが、「室温」(空気の温度)が22℃のときの体感温度はイコールとはなりません。 壁床天井などから発せられている熱を「放射温度」といい、 ・床 ・壁 ・天井 ・窓(枠やガラス) ・テーブル 等々 これら全て、部屋の表面の放射温度と、室温(空気の温度)を足して2で割った平均値が おおむね体感温度とイコールになる、と言われています。 夏、洞窟に入るとヒンヤリするのは、岩に蓄えられた冷たい「熱」を、放射冷気として感じているからですし、陽だまりにいると暖かいのは、太陽の日射から熱を得るのと同時に、温まった床や壁からの放射熱を感じているから、という訳です。 暖房の温度(空気の温度)が22℃のとき、 部屋の表面の放射温度の平均が14℃とすると、体感温度は18℃ 同じく 暖房の温度(空気の温度)が22℃のとき、 部屋の表面の放射温度の平均が20℃であれば、体感温度は21℃ と、差が出てきます。 部屋の表面温度のなかで、もっとも冷たくなるのは窓ガラスの表面です。 放射温度計で、シングル窓ガラスのある部屋で、ある朝の表面温度を測ってみたところ シングル窓ガラス 10℃ 床 15℃ 壁15℃ という結果でした。 (ちなみに同じ時間の 陽のあたっている床 26℃ 陽のあたっているシングル窓ガラス 19℃ ・・・太陽の威力判りやすいですね。) リフォーム等で温熱環境を改善する際には、建物全体の断熱性能を上げることはもとより、それが叶わない場合も 温度が大きく下がる窓ガラス面に、まずは対策を施すことがとても重要になります。 新築の場合は、関東でもペアガラスの入ったサッシを選ぶことが普通になりましたが、状況に応じて、断熱性能の高いサッシを選ぶことは、効果が大きいです。 今日はここまで。 まだ続きます・・・! #
by o-oik
| 2017-02-20 11:28
| 住まいにまつわる私の考え
とはいえ、まだまだ寒い。春が来るまで辛抱我慢の2月です。 私は冷え性である上に、当たり前のように冬季の室内は暖かい北海道で育った記憶は強固なようで、 いまだに「東京の家は寒すぎる。どうして建物の中に居て手がかじかむのだろう?なぜ家の中で足がしもやけになるのだろう?私何か悪いことしましたか~?」と 時々穴を掘って叫んでいます。 …というのは冗談です(笑)。もう大人なので実際はそんなことはいたしません。 おとなしく室内履きを用意し、体質を改善すべく毎朝体操を続け、漢方薬を飲み始めてみたり、根菜を多く食べ、生姜を飲み物に投入し、、etc対策を講じています。 が、PCに向かいキーボードをたたいている今も手の指が冷たい。室内履きの中の足も冷たい。 私と同じように、様々な策をとりながら寒さと付き合っている方もいらっしゃるのではないでしょうか? 「寒けりゃ一枚余計に上着を着ればよいでしょう。」 「寒いくらい我慢できないとは軟弱だ!」 関東に住み始めてからこれまでに、建物の中が寒いと訴えたときの代表的な反応は上記の二つのパターンでした。 なるほどそうですね、、本州の人は随分身体が丈夫なのだな。 そう自分に言い聞かせてきましたが そろそろ我慢の限界、本音を書いていきたいと思います。笑 昨年平成28年4月には省エネ法が一部施行されて、新築住宅に課せられるスペックが上がる一方、既存の建物の中には「無断熱住宅」なるものが多く存在しているのも世の現状です。家の建物の寒さを仕方ないこととして、捉えている方は多いのではないでしょうか。「家は夏を旨とすべし」なんて、800年前に有名人がうっかり書いたものだから、まだ信じてる人が居たりして。 断熱なんかしなくても、エアコンを付ければあったかくなるでしょ。 なんてことを言ってのける人々。(注:私には、暴言に聞こえるのです。) 床下の湿気対策は抜かりなくても、床の断熱材を入れずなんの疑問も持っていない人々。彼らに遭遇する出来事があり気づかされたことがあります。 それは私たち専門家にとっての「当たり前」はまだ「世の当たり前」ではないということ。そして、彼らにはなんの悪気もないこと。私たちが十分に「お知らせ」をできて居ないことを思い知らされた出来事でした。 これまで寒かった室内の温熱環境が改善されるとどうなるのか? 今費やしている不要なエネルギーを、もっと向けるべきところに使えるようになります。 暖房エネルギーだけの話ではありません。人間のポジティブなエネルギー、健康に充実して過ごすことのできる人生の時間が増えます。(イギリスでは「住宅改修によって医療費を減らせる」という試算の元に、政策として断熱改修に取り組んでいるそうです。) とくに、高齢者と呼ばれる年代に方々にとって、住まいの寒さ改善によって、健康寿命を延ばす可能性があるという研究もされています。※ 世界に先駆けて、高齢化社会への道をばく進することになる日本で、住宅の断熱のレベルを、法律で底上げできる新築住宅だけでなく、既存住宅も含めて、底上げしてゆくことが大事だと感じます。 設計を依頼してくれるお施主様には、「当たり前」のこととして、断熱性能や居住性のことを考えた材料の提案を行ってきました。 これまで考えてきた住まいの断熱や寒さを感じにくい工夫について、数回に分けてお伝えできれば思います。 ※慶応大学理工学部 伊香賀俊治教授による #
by o-oik
| 2017-02-08 13:53
| 住まいにまつわる私の考え
年末にお知らせ、失礼いたします。 ホームページをリニューアルしました。 「東埼玉の家」をWorksにアップしております。 ぜひご覧ください。 及川敦子建築設計室 http://www.o-oik.com/index.html(年末のぎりぎりまで調整してくださりありがとうございました!) 皆様にとって 新しい年が、穏やかで幸せな一年となりますように。 及川敦子 #
by o-oik
| 2016-12-31 18:05
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