秋の美しい日が続きますね。久々の更新です。気付けば、住宅医スクールも既に後半。。
近頃は良い気候のなか、地道に実施図面を書き進めています。 夏、汗でドロドロになりつつ基本設計をまとめていた日々が嘘のようです。笑 先日、短い期間に連続して学生時代の友人たちと会う機会がありました。それが引き金となったのか、当時のことが記憶の水底からぽこぽこと湧いてきて仕方がない。 今の自分がやっていることは、はっきり言って当時立てた仮説の検証作業と言える。13年かけて孔を掘り進めてきて、そうだなと思うのですが・・。 日曜、京都造形のスクーリングの帰り道に、学生とカーンの話をした。 ルイス・カーン。(生前事務所を訪ねたことがあるというある御大はルイ・カーンと読んでいました。) ”平面図を見ると、構成は厳格だし、厳格な建築に見えるけど、実際はハッピーな場所だったよ。” 「自由さを構築する」とでも言えるような課題を設定し苦戦していた相手が、オーダーに従ったカーンの建築への共感を示したことへのレスポンスとして 自分が学生の頃に見たソーク生物研究所に「ある」、と感じた衝動のようなものを伝えたいと思い発した言葉だったけど、あれでは伝わらなかっただろうな・・苦笑。 ソーク研究所は、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴの北部ラホヤという町の海を臨む丘の上にある。 ロサンゼルスの周辺は外を歩くにも緊張感がある喧噪で、当時は夜間観光客が外をふらふらするなんて御法度!という雰囲気だったが、アムトラックで南下したいったラホヤはこじんまりしたリゾート地で、うって変わって静かな場所だった。高所得層の老後の保養地だったようだ。ホテル近くの海岸通り沿いにはヴェンチューリの設計した美術館、青空の下青い芝生。 夜になると細い道沿いに並ぶ木塀の内側からは、庭に出て食事をする人達のグラスの音や話声がさざ波のように聞こえて来る。みなリラックスして、夜風に吹かれてのそぞろ歩きも平気なゆるんだ空気が満ち満ちていた。初めての海外旅行の緊張から一時解放されて、安全で余裕があるというのは何と素晴らしいことか、と感じ入った記憶がある。 ソーク研究所と言われても?と言われる方には、分子生物学者の利根川進がノーベル賞を受賞した研究を行っていた研究所と言えば分かっていただけるだろうか。私はまったくそういう予備知識は無しで、ただ旅行先で足を伸ばせそうな建築をピックアップしただけだったが、旅から戻り『精神と物質』を文庫で読んでそのことに気づくまで「あんなすばらしいところで働けるなら、生物学者になっても良い!」と廻りの友人に口にしていたくらい感激は大きかった。すぐに思いとどまって本当に良かった。笑 私が使った「ハッピー」という言葉では底が浅いかもしれない。カーンは著作の中で「JOY」という言葉を使っている。ハッピーは外から見て描写のできるイベントが引き起こす状態で、JOYは何もしなくてもおなかの底からわき上がって来るような歓び。と私は解す。 * * * さて、あの場所に立った感じを何と理解するか。 西海岸の気候、明るいトーンの海と空、それらを反射するトラバーチンを敷き詰めた中庭のせいには違いないのだけど、「西海岸のせい」と片付けたくない。 あこがれの建築を訪ねた学生の高揚感は増幅器の役割くらいは果たしただろうか。 ある建築家が、ソーク研究所の施行中の写真が建築雑誌に発表されていたのを目にし「職人達が打放しコンクリートをつくり上げていく姿が、喜びに満ちているように見えた」と書いていた。 その職人達の喜びが、壁の間の空間に、こだましているのではないか そう、想像してみたくなるが、これもある意味即物的すぎるかな。 ”はじまりの瞬間の可能性を表現する”その喜び、ということなのか。 ここに留めておくのがきっと良い。 ”はじまりの瞬間の可能性を表現する” これもカーンの言葉だけど、建築論集の序文でI崎氏がカーンの思惟は「秘教的にも見える」と指摘していて、だからプラグマティズムが席巻していたアメリカの建築界で一時忘れ去られ、読解に光が当たらなかったのだ、この論集ではハイデガーの思想との関連性で注釈が加わり理解を助けてくれる、というようなことを記しておられるのですが、、、私にはかえって分かりにくかった。笑 カーンは秘教のイニシエートだった、と理解する方がよほどすっきりするのじゃないだろうか。 もし万が一、共感できるという方が居たらお声がけください。語りましょう。笑
by o-oik
| 2014-10-30 16:18
| 建築
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