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「左官仕事どろり好奇。」

毎回左官職人がゲストとなって、インタビュアーが話を聞いてゆく
という珍しい講座の第一回目に行ってきました。

第1回目のゲストは茨城は古河の左官、白石博一さん。

インタビュアーでもあった「晴れやか美術計画」の木村謙一さんと一緒に手がけたという仕事から、
今月28日にオープンするというさいたまの大宮盆栽美術館の大津壁などなど。

石膏、セメント、石灰、土の4つにわけて、その特徴から
仕事で試行錯誤を積み重ねながら白石さんが感じてきたこと
木村さんによる解説(硬化反応の化学式解説まで!)があって、あっという間の3時間だった。


水をコントロールするために、材料の配合を変え、
コテを当てて水を出す。樹脂をいれない土壁の場合は、しっかり固まっても水に戻すことができる。
土や水を操う技を繊細に繰り出す左官仕事が現代に続いていて、目にすることができることは
私達みなに残された知恵なのだと受け止めたい。

床のタタキについての話。
タタキは「三和土」と書いて、土に石灰や水を混ぜ、叩き固めると硬くなるのでタタキという。
不特定多数の人が利用する施設などでは、
ハイヒールでも削れてしまわないように、タタキを硬くしなくてはならず、
しかも工期がないので養生しなくてもすぐに硬くなるようセメントを入れることになる。
セメントは硬い、土は弱い、といった思い込みが発注者の側に強くあって、
毎回その思い込みとの戦いなのだそうだ。

セメントは硬くなるがその分割れやすくなる。といい、
歩いたときの感じがやわらかいから土のタタキが好きだという白石さんが印象的だった。

設計の仕事でも、世の中にある根強い思い込みのようなものを 圧力に感じる場面が
ある。思い込みに乗るフリをして、楽なほうにあわせていくうちに
フリがフリではなくなるのは恐ろしいことだ。
踏みとどまって、ぶつかってくる流れを感じ続けることが唯一の方法なのだと思う。 


そして、せめぎあいの中で仕事を続けている職人さんの話を聞いているあいだ、
私の目には、その姿はあるときは研究者、あるいは技術者のよう、はたまた詩人、
ときに哲学者のようにも見えていたのであった。

これから10月まで毎月一回の講座があるようです。
優秀な左官職人の話を聞ける大変ユニークな機会だと思います。
普段あまり左官に触れる機会がない、という方も、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

連続講座「左官仕事どろり好奇。」 会場:東中野パオ

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by o-oik | 2010-03-21 19:52 |


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