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冬暖かい住まいは人を幸せにする6 -床暖房の使いどころ-

桜も満開をすぎましたね。皆様はこの春はお花見を楽しまれたでしょうか?
わたしは、お花見らしいお花見ではないですが、
一度見てみたかった千鳥ヶ淵の夕桜を思いがけずみることができて嬉しかったです。


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まだ続いていた「冬暖かい住まいは人を幸せにする」・・・春なのに(笑)

前回までは、
冬暖かい家をつくるには、しっかり断熱して窓からの冷気も防いだあとに、床を何で仕上げるか?が大切。
そして
無垢材に絞って話をすると、床材には大きく分けて二種類があること。

・傷になりやすいけれど、暖かく足腰への負担も少ない杉、桧、サワラなどの針葉樹
・傷になりにくいけれど、冷たく感じ比較的硬い、ナラカバチェリー、栗等の広葉樹

杉を取り上げて、針葉樹を床に張った場合の効果についてまで、お話しました。




今回は、広葉樹のような「硬い」床を張る場合について書いていきたいと思います。

杉は魅力的だけれども、
床は硬い方がよい、という場合もあるのではと思います。

同業の設計者の方とお話をしていても、「傷になるとクレームになるでしょう」と言って、
針葉樹を使うことは考えもつかない、といった反応をいただくこともあり。

このあたりは、建て主さんが出会った設計者の考え方にもよるところでして、
ご相談をいただくタイミングで、価値観を良くお伺いしておくことが大切と感じています。


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硬さのある広葉樹のナラを選択した事例。

一日の長い時間を過ごす、書斎とリビングを中心に、床の段差を取り払ったワンルームとして断熱耐震改修を行ったものです。



改修前のお宅を拝見すると、重たい椅子や、辞書を沢山載せたサイドテーブルなど、キャスター付きの動かせる家具を書斎でお使いでした。
お伺いした生活の様子から、書斎で過ごす時間が、お施主さまにとって大切な時間だと感じたことから、このケースでは「硬い」床材が適していると、判断をさせて頂きました。


既存の床の上から、後付けで置いてあった温水式床暖房をお使いだったので、
新しく断熱材も入れ替えたうえで、床に隠蔽するタイプに変更しました。

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結果、3種類の熱源が、ひとつの空間(1階の居間と書斎)に同居することに。

・ツインヒーター(FF式の石油ストーブ 兼 暖房用温水器)
・温水式床暖房
・窓下の温水パネル


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硬い床材は、床暖房と相性が良いのですね。
そのまま使うと、ヒンヤリしてしまうので、入れざるを得ないという事情がありますが、
「ヒンヤリしやすい」は裏を返せば「熱伝導率が良い」ということでもあります。

一方、空気を沢山含んだ柔らかい材料は、床暖房で熱を加えられることで
伸び縮みしやすく、相性が良くなかったりするのですね。。

暖房には設備費に加えてランニングコストもかかることも視野に入れて
どこに投資するか、それぞれのライフスタイルと照らし検討することが大事ではないかと思います。

もちろん、しっかり断熱を施すことは大前提として。
サッシの性能もあげ、冷気の進入を防ぎ、冬は利用できる太陽の日射熱を取り入れた上で、
どうするのか?

素材の選択で、エネルギーを消費せずに快適を保てるのなら
それがベストで、
それぞれの状況に応じて、判断することが大切かと考えます。

(杉の厚板と、ナラの床材サンプルに両手を乗せてもらった時点で「暖かさが違う」と反応があるくらい、体感には差が出ます。
 また、暖房時の温水の温度はなるべく低くして運転できるのが「良」です。)




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最後に、杉床のスペースに床暖房を組み合せた事例です。
といっても、床暖房は、窓下の熱源として利用して大きな窓面からのコールドドラフト(下降冷気)を防ぐ目的でコンパクトな範囲に納めました。


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Low-Eガラスの樹脂サッシとした家ですが、性能を上げていても、断熱材の入った壁に比べればガラス面は冷たく、コールドドラフト(下降冷気)が気になってしまう心配がありました。

お施主さまから「庭に面した掃出し窓にしたい」というご要望があったので
跨げる程度の腰壁を付けて放熱器を設置する案は見送り、

床に落とし込んで、床に空けたスリットから放熱する手法も、検討しましたが

出入りする窓の足元に、
床下用の、放熱フィンの付いた放熱器を設置すると、床にあけたスリットからゴミが落ちたりホコリが溜まるのでは、など
お掃除などメンテナンスの面で不安の声もありました。

そこで、うーーーん、と唸り

温水式の床暖房パネルを根太間にはめることを思いつき(!)
掃出し窓の下だけ、床暖房+タイル床を提案しています。
(他の壁にとりつけられた温水パネルと、同じ温水を廻しています。)

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タイルなので、濡れたものを置いても大丈夫ということで
置きたいと伺っていた観葉植物など鉢物への水遣りの際に、こぼれても具合がよいかなとも思い提案しました。

また寒冷地では、雪に濡れた手袋や靴をストーブの廻りで乾かしたり、暖める習慣があるのですが、ストーブのないこのお宅では床暖房の入ったこのタイル床が、手袋の一時仮置き場になっているとのこと、、
想定外の使われ方でした。
肝心の、コールドドラフト防止のほうも、効果が出ています。



冬もあるけど、夏もある日本。
開口部の扱いについては、地域に応じて研究の余地がありそうです。





by o-oik | 2017-04-13 12:58 | 住まいにまつわる私の考え


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